日々好んで読んでいる本のただの感想です。
第10回 白洲正子「遊鬼 わが師わが友」(平成10年 新潮文庫)

 今、福岡アジア美術館では、「白洲正子の世界」と題する展覧会が行われています。長年過ごした自宅、東京都町田市にある武相荘(ぶあいそう)もそのままの形で公開され、ここのところTVや雑誌でも特集が組まれていますね。

 白洲正子とは何者か?という疑問に対するピッタリな表現がこの本の解説にあります。「〜芸術、美術、工芸の旗手として、あらゆる教養と鋭い審美眼を備え、日本の歴史が誇るそうそうたる教養人、文学者、職人と深く交流のあった、いわば日本文化の女ドンみたいな存在〜」(阿川佐和子)さすが阿川さん、うまいです。つけ加えるならば、明治43年樺山伯爵家に生まれ、吉田茂より信頼された白洲次郎と一目惚れで結婚、留学経験も皇室との関わりもある、というお方です。

 さて、展覧会ですが、白洲正子セレクトショップといった感じで普段使いの骨董などが並べてあり、古タンスの上のいい焼物の花瓶には梅と椿がさしてある、といった風情です。私がもっとも興奮したのが、次の3点です。本物だ〜とガラスケースにはり付いてしまいました。
 ■青山二郎の直筆原稿および手紙
   原稿用紙に万年筆でコマゴマと書き付けてあるおしかりの手紙。
   その厳しい指導内容を読むと、白洲正子さんがますますうらやましくなる。
 ■小林秀雄の直筆手紙
   鉛筆での走り書きのような短文。またもやうらやましい。
 ■白洲次郎の遺言書
   墨書き1枚で、内容が豪快で人柄そのまま。

 『遊鬼』にはこの3人の事を書いた文章がでてきます。その他にも梅原龍三郎、洲之内徹、福原麟太郎など豪華な顔ぶれです。黙ってじっとしていてもそんな交友関係は出来ません。白洲正子さんの行動力の素晴らしさが反映しているのです。

 武相荘のホームページは(http://www.buaiso.com/)です。この機会にぜひ「白洲正子の世界」と「白洲正子をとりまく人々」を堪能してください。


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