日々好んで読んでいる本のただの感想です。
第12回 竹村嘉平「宇治茶いい味いい香り」(1999年 草思社)

 新茶の季節です。鹿児島ものが出たと思ったらもう八女茶が出回り、4月の下旬から5月の上旬にかけて、 お茶も桜の開花のようにだんだん北上していきます。

 竹村さんは昭和12年京都生まれ、高校卒業とともにお茶問屋で丁稚として1年間修行、 家業の竹村玉翠園というお茶屋さんで仕事を覚え、店を継ぎます。お店では、お客さまにお茶を出しながら、 世間話をされるとのこと。

 その竹村さんが、お茶の基礎知識、新茶について、宇治茶について、そしてご自身の半生を語られています。お茶を選ぶという長年培った職人技に驚かされます。 この1册でお茶屋さんがどんな仕事をしているのかがよくわかります。

 土地柄、九州といえば八女茶ですが、この本を読んで宇治茶が飲みたくなりました。 竹村さん自身、日本各地のお茶を飲んだが、宇治茶がいちばんおいしいと語っておられます。 TVニュースの新茶のセリの様子は、海苔のセリ同様、いつもぼーっと観ているようなないようなかんじなのですが、今年は眼を皿のようにして観察しました。お茶の葉をすくって香りを嗅いでいるところ、スプーンで味をみているところなどが、本に書いてあったとおりでした。何を基準に選んでいるのかといったポイントや裏話も書いてあったので楽しめました。

 どんな人がどんなお茶を買うのか、お茶の葉の収穫時期を見極めるためにある植物を庭に植えているということ、 お茶の名前を味と茶葉の様子で当てる競技の話など、その道に関わっていないと知れないような話が満載です。

 この本は竹村さんが語られるのを書き起こしたものですので、京都の言葉そのままの雰囲気がでていて、 店先でお話を聞いている気分になります。 そのせいかも知れませんが、新茶はね、とか、おいしいお茶の色具合はね、とか、お茶通のふりして他人に語りたくなってしまう魅力にあふれています。私も数人にながながと語ってしまい、ちょっと反省しました。とにかく、お茶とお米はいいものに限る!と思うのです。


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