日々好んで読んでいる本のただの感想です。
第2回 「川端康成・三島由紀夫往復書簡」(平成12年 新潮文庫)
 作家同士の文通集です。川端康成の方が約25歳年上で、ふたりは師弟関係にありました。

 三島由紀夫は仕事の話、本や演劇、音楽会の感想等を長々と書いており、華やかな生活振りが伺えます。愚痴をこぼすことも、熱く語ることもあります。対して川端康成には、いつも落ち着きのある印象を受けます。お礼状がたいそう美しく、手紙を書く時のお手本としても利用できそうです。

 入院する川端康成のために、三島由紀夫が送った要るものリストは、4ページにも渡るものです。布団一式、孫の手、味の素、米一升(ふいに重湯などを作るとき)、ゴザ3枚、魚焼器、湯たんぽ2ヶなど、こんなものまで要らないだろうと思う程の大荷物。それも、上野松坂屋で家庭用品部の主任級の店員を一人決めて、案内させながら買い求めるようにとのアドバイスです。

 また、手紙のなかの、ふたりの贈り物のやりとりにも興味が湧きます。

***川端康成から三島由紀夫へ***
  ・ピンクいろの面白い犬(三島由紀夫の子供に)
  ・よくアメリカ映画の中で赤ん坊が着ている面白い着物(子供に)
  ・可愛らしい鞄(子供に)
  ・プチ・フール菓子2箱
  ・イタリーの革細工
  ・美味なる栗のお菓子
  ・マイヨールのレダ(彫刻)
  ・梅原さんのスケッチ
  ・肌ざわりのよいシックなシャツ
  ・奈良漬

***三島由紀夫から川端康成へ***
  ・美しい御菓子
  ・御みごとな巻鮭
  ・面白いスタンド
  ・立派なフランス銀器
  ・貴重の珍味
  ・香水(お中元に送っている)

 ピンクいろの面白い犬と、面白いスタンドとは一体どんなものなのか? 食通の川端康成が選んだ奈良漬が食べてみたい!と意外に楽しめます。この贈り物を見ても、ふたりの生活がかなり裕福であったことがわかります。

 川端康成のような師匠と文通していた三島由紀夫の嬉しさがあらわれた一冊です。

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